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懐かしの誌面

バルーンプロデュース MARU 横山のりこさん

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きっかけは些細なことだった。
一歩足を踏み込むとそこは、表向きの華やかさとは違った体力勝負の世界。
しかし、辛さ以上の喜びが見つけられる世界でもあった。

 

■運命を変えたテレビ番組
 子どもの頃、親におねだりをしては買ってもらった、赤、青、黄色、様々な色のゴム風船。子どもっぽく愛らしいイメージを持つそんなゴム風船が、近年、結婚式やイベント会場を演出する芸術作品として注目を集めている。今回登場するオーナー、横山のりこさんも風船を使って様々な空間をプロデュースするバルーンアーティストの一人だ。4年前、若干23歳で自宅事務所を拠点に、「バルーンプロデュース MARU」を立ち上げて以来、「バルーンブライダル」のプロデュースを手掛けている。昨年には、日本中のバルーンアーティストが腕を競い合うバルーンコンテストで優勝の栄冠を手にし、今春には待望のショップをオープンさせた。そんな彼女のバルーンアーティストとしての人生は、19歳の時に何気なく見ていたテレビ番組をきっかけに幕を開けた。
 「学生時代、女優の坂井真紀さんの大ファンで、彼女が主演していたテレビ番組『ひと夏のプロポーズ』を毎回、夢中になって見ていました。その番組の中の坂井真紀さんの職業が、風船を使って空間を創り上げるバルーンアートだったんです。その職業は華やかで夢があって、私の心に印象深く焼き付きました。『こんな仕事に就けたらいいのにな~』、そう思っているうちに番組は終わり、それから1年くらいが過ぎたある日のこと。テレビ番組のことなど忘れかけていた私は、何気なく求人誌(けいことまなぶ)を見ていたました。そこで私の目に飛び込んできたのが『バルーンアーティストセミナー受講者募集』の記事。セミナーは2日間で費用は18万円。当時の私にはもちろん工面できる金額でありません。しかし、どうしても諦めきれなかった私は『後々、必ず仕事にするから』と、何とか親に頼み込んで費用を出してもらいセミナーに参加しました。しかし、受講生の多くは現在の仕事のスキルアップのために参加した年輩の人たちばかり。両親に大口をたたいたもののそう簡単に就職先は見つからず、私は短大卒業後、デザイン学校に通い始めました」

■飛び込み同然ではじまった修行の日々
 それから1年、デザイン学校を卒業したものの思うような就職先は見つからず、フリーター生活を送っていた横山さんのもとに故郷の母から1本の電話が入った。「のりこちゃん! 高松からバルーンアーティストがイベントで高知へ来ちょったって高知新聞に載っちょったで。問い合わせてみたらどう?」。母からの電話を受け、横山さんは早速、新聞を頼りに、バルーンアーティストとして高松で活躍している東珠貴さんに連絡を入れた。
「ほんと、飛び込み同然でしたね(笑) あの頃の私は、だた、やみくもにバルーンアーティストという職業に惹きつけられていたんです。東珠貴さんの働く『メディアミックス研究所』は偶然にも人手不足に悩んでいたので、二つ返事で面接を承諾して頂き、その後、東先生のもとで私はアシスタントとして働くことになったのです」
当時、高松はバルーンアートがブーム絶頂期。その高松でもたくさんの仕事を請け負っていた東先生は、横山さんが入社して間もなく独立。横山さんも東先生について新オフィスに移籍し忙しい日々を送った。新たなオフィスには先生と先輩スタッフと横山さんのわずか3名。新人とはいえ、手取り足取り教えてもらえるわけなどなく、ある程度の基礎を教えられるとスグに現場に駆り出された。「現場に付いてきて覚えて」そんな東先生の言葉を受け、横山さんは必至に仕事を覚えた。実践を通して学んだ高松でのこの経験こそが彼女を大きく育み、独立への足掛かりとなっていくのだった。
「表向きは華やかな職業だと思われがちですが、会場でのバルーンの設置は荷台を下りたり上がったりとかなり地道な体力仕事なんです。しかも、現在のバルーンアートはブライダルの装飾が主流、婚礼は週末や大安などに集中するでしょ。そうすると、1日に何件も会場を請け負うことになりますからスケジュールはかなりタイトで、早朝から深夜、ひどい時では徹夜なんてこともありました。表向きとのギャップが大きいこの仕事は短期間で辞めていく人も多いんですよね。本当のところ、私も体力的に限界を感じたこともありました。しかし、イメージ通りにできあがった時や、結婚式を挙げた新郎新婦からお礼の手紙を頂いた時なんかの喜びには変えられないんですよね(笑)」

■独立への転機
12040129922l.jpg それから東先生のもとで働くこと2年、東先生はかねてよりバルーンアートと共に行ってきた司会業をメインに仕事をすることになり、一緒に働いてきた先輩スタッフは独立を決めた。「いつかは地元高知に戻って独立しよう」、そう考えていた横山さんは、先輩に「独立後も一緒にやろうよ」と誘われ悩んだ。「先輩に付いていくとなれば2~3年は働くことになる。それからでは高知での開業は難しくなるではないか」と考えたからだ。しかし、そんな気持ちとは裏腹に、学校卒業後、他のものには目もくれずバルーンアートの世界でひたすら働いてきた横山さんにとって、営業や経営などは未知の世界...。果たしてそんな自分に独立はできるのかと、自分の行く先を一人で悩みあぐねていた。そんな彼女の背中を押したのは、常に横山さんの仕事を応援し続けてきた母だった。
「できるかできんかはやってみんと分からんやんか。お母さんも協力するき一緒にやってみようや。一人でするがじゃない、お母さんと二人やき」
そんな、母親、久美さんの心強い言葉に背中を押されるように横山さんは独立を決め、23歳で高知へ帰郷。バルーン、ガス、コンプレッサーなど、必要最低限の機材を揃え、自宅を事務所に「バルーンプロデュース MARU」を立ち上げた。
「幸いにも、姉がホテル日航高知旭ロイヤルのフロントで働いていて、『妹さんがバルーンをやっているなら、一度話を聞こうじゃないか』と上司の方が声をかけてくださったんです。おかげで、独立後の初仕事はホテル日航高知旭ロイヤルさんから頂けることになったんです。その仕事をきっかけに、同ホテルのブライダル担当の筒井さんが、『ホテルだけでは仕事が成り立たんやろう』って、ウェディングプロデュースを手掛ける『カリヨン高知』さんや、衣裳屋の『ひよしや』さんなどを紹介してくれまして。それからも紹介先からまた紹介を頂いてといった次第で、徐々に仕事をもらえるようになっていったんです。今の私があるのは筒井さんのおかげです。ですが、まだ高知では馴染みのなかったバルーンアートの良さを伝えるのには一苦労でした。営業経験のない若干23歳の私の言葉は説得力に欠け、クライアントを前に言葉に詰まることもありました...」
そうして手探りでの開業から1年が過ぎ、がむしゃらに頑張った甲斐あってか高知にも次第にバルーンアートが浸透し始めた。そして、また一つ、また一つとMARUにも仕事が舞い込み始めたのだった。

■心強いパートナーの参入
12040129923l.jpg 開業より3年経った昨年7月、現場作業をよく手伝ってくれていた義兄、石川幸治さんが、勤めていた自動車会社を辞め、横山さんの右腕として本格的にMARUの一員に加わった。
石川さんは、横山さんが不得意とする営業や経営ノウハウ、そしてその頃より普及してきた電飾バルーン(電球を仕込んだライティング効果のあるバルーン)の設置に必要な電気関係の知識を持っていた。さらに男手が加わることで、横山さんの体力的な負担が軽減される。「身内」という信頼関係でつながる心強いパートナーの参入により、MARUはさらにパワーアップを果たした。
 それと時を同じくして、2人が作製した作品「夢花(ハナ)」が第7回 JBAN(ジャパン・バルーン・アーティスト・ネットワーク)コンベンション2003の「ウェディングテーブルアレンジ部門」で初参加初優勝し作品は日本一に輝いた。「もちろん、私も嬉しかったですが、私を応援してくれていた周りの人が私以上に喜んでくれたのが嬉しくて!」この受賞が横山さんに大きな自信をもたらした。
「コンテストで優勝したことは仕事上でも大きな自信になりました。肩書ができたことで、苦手だった商談も少し余裕がもてるようになったんです」
今では多い日で7~8件もの依頼があるという盛況ぶり。しかし、依頼の数が増えるに伴い、お客さんの要望に追いつけないという新たな問題が横山さんを悩ませ始めていた。
「『こんなことも、あんなこともできるんじゃない?』って、色んな要望を頂くんですが、それに応えるためによく頭を悩ませます。私たち、バルーンアーティストには思いもよらないような依頼があったりするんです。一番印象に残っているのが、『バスケが出会いだった』という新郎新婦からの依頼で、『バスケのゴール』を作って欲しいというもの。バスケットボールならともかく、バルーンでゴールを作ろうなんて想像すらしたことがなかったので悩みましたよ。ですが、なんとか完成し大変喜んで頂きました。その他、『四つ葉のクローバーを作って欲しい』なんていう依頼もありましたね(笑)」
横山さんは、難関をクリアーする度にバルーンアートの新たな可能性を見出し、着実にステップアップを遂げてきた。

■バルーンアーテートの未来予想図
 そして、今年4月1日、菜園場商店街の一角に待望のオフィス兼ショップを開業。「色んな方に直接、バルーンをススメられる場所が欲しかった。これからは、ブライダルだけでなくギフトとしてのバルーンアレンジを広めていきたい。そして『可愛い』だけではなく、様々な表情を出すことができるバルーンアートの無限の可能性をたくさんの人に知ってもらいたい」
横山さんにとってカラフルなバルーンは夢の形そのもの。バルーンに夢をのせて、「バルーンプロデュース MARU」はまた一つ、新たなステップへと進もうとしている。

 

バルーンプロデュース MARU
高知市桜井町1丁目4・1
TEL/088・885・9887
営/10時半~18時半
休/水曜日